刺繍の基礎知識
刺繍機を購入して刺繍加工をするためには、刺繍についてある程度知っておく必要があります。
刺繍糸の種類・針の種類・下紙の選択・縫い方の名称・刺繍の密度などです。
詳しくは、技術情報のページを参考にしてください。
刺繍糸 について

刺繍ミシン
刺繍糸は普通の糸と金糸銀糸があります。普通刺繍糸にも、材質と太さがあります。
ここでは、普通の刺繍糸について説明します。
【材質・レーヨン糸】
一般的に使われている刺繍糸は、レーヨン糸 と呼ばれる糸です。
メリットは、〇光沢がある 〇熱に強い 〇しなやかである
デメリット、▲切れやすい 〇漂白材に弱い です。
糸のブランド:パールヨット・エンゼルキング・オゼキ ワイヤー・ミサイル ツル など
【材質・ポリエステル糸】
スポーツ関連のユニフォームには、ポリエステル糸を多用します。
メリットは、〇強度がある・切れにくい
デメリット、▲光沢が少ない ▲熱に弱い ▲糸調子が難しい ▲しわになりやすい
糸のブランド:ウルトラポス・パールヨットポリ・キングスター など
用途に合わせて使い分けましょう。
詳しくは、右の「技術情報」のページをご覧ください。
刺繍ミシンと刺繍機の違い

刺繍ミシン
いわゆるミシンとは、2枚以上の生地を縫い合わせる用途で作られています。生地を縫い合わせるために、さまざまな工夫がされておりますが、目的は、しっかりと縫い締めるための工夫なのです。
そのミシン構造で刺繍をすると、必要以上に締まりすぎるので、下紙をひいたり糸調子を微妙に調整しないと綺麗な刺繍ができません。さらに高速で刺繍をしようとすると、さらに縫い締まりが加速してしまします。

刺繍機
刺繍糸は、基本的にレーヨン糸(人絹)を使用しますので、糸に力が加わると、すぐに切れてしまいます。
タジマの構造は、いかに刺繍糸にストレスを与えず、均一に糸を表面に乗せかつ、過度の縫い締まりを軽減するかを基本に研究・設計されております。ようするに、ミシンの構造を刺繍に流用した刺繍ミシンは、高速刺繍が苦手で、縫いしわが発生しやすく糸切れしやすいとゆうことになります。
弊社では、刺繍ミシンと刺繍機を上記の理由で分類しております。
2019年 タジマ工業㈱は、とうとうオートテンション( 自動糸調整 ) 刺繍機を開発し販売開始しました。
刺繍機を購入にあたって性能の比較ポイント
カタログの数値より実際の稼働状況を比較確認しましょう。
刺繍機の購入検討する場合、次のことを重点的に比較すればよいでしょう。
- カタログ上で、最高回転数(1分間に何針縫うか)の数値を確認する。そして、刺繍のふり幅でどれだけ減速するか。
- ふり幅のある刺繍を低速にならずどれだけ刺繍できるか。 例 3mm幅 5mm幅 8mm幅 10mm幅 のサテンステッチ
- 自動糸切構造付で、糸を切るまでの速度と切終わったあとの縫い始めて目標速度に達するまでの時間がどうか。
- 刺繍に取り付けられた枠を手で直接押してふらついていないか。
- 全回転釜を使用しているか。
- ボビンケースに糸案内のラセン状の金具があるかどうか。
- 針板の穴サイズが何種類あるか。
- 下糸が無くなったら自動で停止するか。
刺繍加工業のジャンル
刺繍加工をされている業者のジャンルは、大きく分けて4ジャンルあります。
業者によっては、複数のジャンルを手掛けておられる加工業者もあります。
ネーム刺繍業
作業服の会社ロゴ 社名 個人名の刺繍、学生服の学校名 個人名 など、おもに刺繍されておられる業種
マーク加工業
野球やサッカーなどのマークを刺繍やプリント カッティングマークなどをメインにされている業種 Tシャツのプリントやノベルティーグッズの作成など
アパレル刺繍業
大量生産するポロシャツや婦人服 などを 縫製前の裁断状態の生地へ刺繍加工する業種 おもに、縫製工場と提携して 刺繍のみを請け負う刺繍業
ショップ+刺繍
お店で販売する商品に購入者の希望する刺繍を入れて販売する形態
スポーツ店でのネーム刺繍 武道具店での刺繍加工 タオル売り場でのネームサービス など
刺繍機の種類について
刺繍機は、用途に合わせて様々な機種があります。
1頭式 刺繍機 (シリンダータイプ)
テーブルを下げたり外して 筒縫い状態のモデルをシリンダータイプといいます。
新規で刺繍機を購入される場合、1頭式の刺繍機が中心です。 タジマの場合、1頭式でも用途にあわせて7機種あります。
1、価格優先:タジマ[彩]刺繍機・TMBP-SCです。
2、刺繍範囲優先:TFMX-C ・TWMX-C です。 TFMX-Cは 縦45cm横52cmのエリア TWMX-C は 縦55cm 横60cmの広範囲型です。
3、刺繍する素材が硬い場合:TMBR-SCです。
生地押さえ(布押さえ)をバネ式ではなく、パルスモータを採用して、押さえの力やタイミングや高さをコントロールして
縫う素材に最適な環境を設定できます。
4、かさばるバッグやリュック さらにはゴルフのキャディーバックまで刺繍する場合:TMBU-SC です。
上のTMBRをベースに、脚台を見直して脚テーブルを油圧で作業にあわせて昇降できる構造にしたモデルです。
5、高品位の刺繍を手軽にしたい:TMEZ-S1501 です。
自動の糸調整と布押さえコントロール機能の両方を装備した 新発売の刺繍機です。
ストレッチ生地や薄い生地でも自動調整機構がはたらいて、上級者や何度か試し縫いしなければならなかった刺繍が、
難なく刺繍できます。初めての方にお勧めです。
複数頭式 刺繍機 (少数頭・シリンダー)
一体式で 刺繍のヘッドが、2頭・4頭・6頭・8頭 までのシリンダー機です。
刺繍機は、刺繍する速度が1分間に1200針刺繍するのが最高回転(最高稼働速度)なので、1頭式で、たくさんの刺繍加工をする場合、時間がかかってしまいます。 同じ刺繍を大量に生産する場合は、同時に稼働する複数頭式が最適です。
メリットは、1頭式刺繍機を4台設備するよりも、4頭式を設備する方が、機械価格が半額くらいになります。
さらに、オペレーター(操作する人)も1人でできますので、人件費もかかりません。デメリットは、4頭同時に別々の作業ができない。
機種は、3種類あります。
1、TMFX-2C シリーズ TMBPシリーズの機構と同等の複数頭機の刺繍機です。
2頭式・4頭式・6頭式・8頭式の4種類で、刺繍範囲が、縦45cm 横50cm と 縦45cm 横36cm2タイプあります。
2、TMAR-KC シリーズ TMBRシリーズの機構と同等で、布押さえがモーター式のデジタルコントロールです。
2頭式・4頭式・6頭式・8頭式の4種類で、刺繍範囲が、縦45cm 横50cm と 縦45cm 横36cm2タイプあります。
3、TMEZ-KC シリーズ TMEZシリーズの機構と同等で、オートテンション機構の仕様です。
2頭式・4頭式・6頭式・8頭式の4種類で、刺繍範囲が、縦45cm 横50cm と 縦45cm 横36cm2タイプあります。
※令和2年9月1日より 正式発表
多頭式 刺繍機 (フラットタイプ)
シリンダー機ではありません。10頭・12頭・14頭・15頭・18頭・20頭・24頭 ~
縫製前の生地一面に刺繍したり、裁断状態の生地へ刺繍する 最量産機になります。
機種は、3機種あります。希望にあう刺繍範囲が特注できます。 例:縦100cmや120cmにしたい など
1、TMCP-VF シリーズ TMBPシリーズと同じ機構の一般的刺繍機です。 量産機として一番売れております。
2、TMCR-VF シリーズ TMBRシリーズと同じ機構で、デジタルコントロール布押さえを装備しております。
このモデルだけ、オートテンションを刺繍機の注文の際、オプションで仕様変更できます。
3、TFMX シリーズ このモデルは、TFMX-2CをTMCPタイプのフラット構造にした複数頭機になります。
このモデルは、4頭式・6頭式・8頭式 の頭数になります。
特殊用途の 刺繍機
2、テープ・リボン・コードなどを一緒に縫い付ける刺繍機:TLMXシリーズ
3、サガラと平刺繍が一緒にできるミックス機:TCMXミックス機
4、車の座席用のヒーター線縫い付け刺繍機:TLMXヒータ線専用機
5、車のシート等の穴あけパンチ刺繍機:HARシリーズ
6、車のシート等の高品位デザインステッチ用刺繍機:PARシリーズ
7、本革や合皮などへ穴あけと縫製が両方できる刺繍機:PAXシリーズ
刺繍糸について
刺繍糸の種類
レーヨン糸、ポリエステル糸、金糸・銀糸が代表的な刺繍糸の種類になります。
一般的には、レーヨン糸を使用しますが、スポーツ関連の刺繍は、強度が必要になりますので、ポリエステル糸を使用します。
刺繍糸の太さ
120d/2(ヒャクニジュウデニール)一般的な刺繍糸の太さになります。目安的に、約0.4mmくらいの太さです。
用途に合わせて、刺繍糸の種類や太さを変更して、クオリティーの高い刺繍加工を心がけます。
刺繍の糸の太さが変ると刺繍がスカスカになりクオリティーが低下しますので、刺繍データーの密度を高めます。
刺繍糸
価格は目安です。販売店 購入数などの条件でかわります。消費税は含んでおりません。
種類 | メーカー | 太さ | 長さ | 価格 | 備考 | 1m | 推奨密度 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
レーヨン糸 | パールヨット | 120d/2 | 2,000m | ¥425 | 一般的な刺繍糸 | ¥0.21 | 0.40mm |
レーヨン糸 | パールヨット | 75d/2 | 3,000m | ¥505 | 小さい文字など刺繍用 | ¥0.17 | 0.30mm |
ポリエステル糸 | ウルトラポス | 120d/2 | 2,000m | ¥480 | 一般的な刺繍糸 | ¥0.19 | 0.40mm |
ポリエステル糸 | ウルトラポス | 75d/2 | 3,000m | ¥430 | 小さい文字など刺繍用 | ¥0.14 | 0.30mm |
金糸・銀糸 | キングスター | 1掛け | 3,000m | ¥1,300 | 一般的な刺繍糸 | ¥0.43 | 0.40mm |
金糸・銀糸 | キングスター | 8分 | 3,000m | ¥1,300 | 小さい文字など刺繍用 | ¥0.43 | 0.30mm |
下糸 スパンミシン糸 |
カナガワ | #130 | 20,000m | ¥1,250 | 細くて強い 多く巻ける | ¥0.06 | ---- |
ネーム例 楷書体で、 野中工業㈱ を13mmのサイズで刺繍する場合。
刺繍糸8m80cm 下糸2m70cm 使用 ・レーヨン糸 ¥1円84銭 ・ポリエステル糸 ¥1円67銭 ・金糸 ¥3円78銭 ・下糸¥0円16銭
つまり刺繍単価は、刺繍糸代はほとんどかからず、人件費と設備費・技術料の価格といえます。